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[コメント] トゥモロー・ワールド(2006/米)

「if…」の世界を描くことが、目的ではなく、現代社会を撃つための手段であるので、そこが評価の分かれ目かも。徹底的に「作り上げる」ドキュメンタリタッチという映像に眼福眼福。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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子供の命や顔や手足をふっとばしたりしながらも、何らかの大義のため、現在の世界のあちこちで起きている紛争。その大義が「明日の世界」に繋がる為のものだとしたら、なぜ明日の世界の住人たる子供の命がかくも当然のように蕩尽されているのか? 「子供たち」は後から後から無限に生まれ続けてくるとでも思っているようだが、もしそれが人類にたった一人の子供ということになったとしてもお前らまだ戦い続けるか? 原題にこめられた監督の気持ちはそこにあると思う。そしてそれが、たった一人の子供を通してやるために、戦闘を中断させる人間たち、というシーンに結実していることは間違いない。

さてここでの監督の視点なのだが、「たった一人の子供」なら戦闘を中断するであろうに、「複数の子供たち」であれば構わず戦闘を継続するであろう人類なのだ、という現代社会の批判や皮肉は見て取れるが、本当に子供が生まれない世界にあって、そこに子供の存在を見出した時の、「神の領域」の前の人類の立ち振る舞いであるとか、どんな手を使ってでも生命を存続させようとする生命体の姿であるとかを洞察しようという気持ちはさらさらないと思う。要するに現代批判のための手段としてのSFであって、SF本来の醍醐味である架空世界の現実感に言及するものではない。が、SF的あるいは根源的なテーマに広げなかったことは、監督が自分の言いたいことを表現するためにはそれで正しいのだと思う。

ドキュメンタリタッチのテクニックでよくあるのは、「対象をよく写さない」という、粗画・手ぶれ・アウトフォーカスなど「ドキュメンタリ[映像]」に擬したものである。これはこれでありなのだが、本作を見て「見たいものをきちんと見られる」というドキュメンタリ映像がとてもストレスフリーなことに気付いた。徹底的に作りものであるからこそできるこの現実ぽさはかなりいい。だから何気に構図とか映画的に美しい絵も多かったりする(ボートで外海に出てくるシーン。杭の上に鳥がとまっているところなんか、これのどこがドキュメンタリタッチかというくらい映画的)。作るの大変そうだけど。

(評価:★4)

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