[コメント] クィーン(2006/英=仏=伊)
重厚でどっしりとしたドラマで見ごたえがあった。心地よい緊張感にあふれ、一種の良質のサスペンスと言ってもよい出来栄えであることは間違いないが、一方でよくよく考えると、非常に皮肉な映画でもある。
ダイアナ妃の事故死直後の英王室とブレア首相の対応をテーマにして描いたドラマだというのはわかるし、そういうものとして落ち着いた雰囲気と渋い演技で魅せ、相当の現実味が感じられた。
しかしながらそれでもなお、あえて指摘したいのは一体、ダイアナ妃を死に追いやったものはなんだったのか、という問題である。
如何にその背景には劇中にあったような英王室との確執なりがあったにせよ、直接的には「報道の自由と民衆の知る権利」を振りかざし、個人のプライバシーを踏みにじってもなんとも思わない、行過ぎた強引なマスコミの取材が、事故を招いたのではなかったか。この原因には一切目をつむり、ただダイアナ妃死後の英王室の対応のみを再び(映画をも含む広い意味での)マスコミがその中心になって取り上げる。
このあまりに傲岸不遜な様は見ていて不快になる。まるでマスコミこそが、すべてを屈服させる真の王者であると言わんばかりではないか。自らの責任には一言も触れずに、「国民の声の代弁者」という大義を無条件に掲げて我がもの顔に振舞う有様は、神に命じられ国と国民にすべてをささげたと誓いをたてたエリザベスと一体どれほどの違いがあるというのだろうか。
そのマスコミによる英王室への批判はある意味では滑稽でさえある。(だからと言って英王室の肩を持つものではないが、案外それがこの映画の狙いだったりして)
そういう問題を考えずにはいられなかったが、映画自身はやっぱり良くできた、心地よい緊張感にあふれた、一種の良質のサスペンスと言ってもよい出来栄えであることは間違いない。
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