正直、サム・ライミ監督自身が『スパイダーマン』の世界に溺れてしまっているところが多々見受けられ、ゆえに突っ込みどころ満載の映画であることには違いない。しかし「世界の『スパイダーマン』」と認知され、映画として一人歩きを始めたこのシリーズを、原点であるアメリカン・コミックの世界に呼び戻し、古くからのファンに対する敬意を払おうとした彼の熱き思いを誰が否定できようか。

そしてそのように受け取り、前述のサム・ライミはもちろん、サンドマンやヴェノムが登場（誕生）するに至る展開の唐突さや、グウェンの中途半端な扱い、カッコつけてもギャグにしか思えないピーター（これに関しては３０を過ぎて「おっさん」が入ってきたトビー・マグワイアその人に問題があると思われる）や、ＭＪの毛深さに至るまでを全て許し、『スパイダーマン』の元々の舞台であったアメコミの世界を存分に楽しむのが、この映画に関しては正解であるように思う。