[コメント] アポカリプト(2006/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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冒頭からラストまで気を緩める事の出来ないシーンの連続で、終わった頃にはものすごく疲れていました。ここまで緊張感を持続させられると、本当に気力を消耗してしまい、映画館を出る頃にはぐったり。映画について考える余裕すら残っておらず、数日後ようやくその余裕が出来たという感じです。
まず冒頭の狩りのシーンで主人公ジャガー・パウ(ルディ・ヤングブラッド)の美しさにビックリ。どんだけオトコマエ!!ぐらいの。そして品のない会話の応酬に辟易としつつも、彼らの生活を垣間見る事が出来る重要なシーンだったのかなと、後になって感じました。
また捕虜として捉えられてからの、怒涛の残酷シーンでは鼓動が乱れっぱなし。これからどこに連れていかれるのか、これから何が起こるのか、一体何をされるのか・・・そういった「不安」と呼ぶにはあまりに大きすぎる目の前の闇。これがひどくリアルというか、まるで自分も捕虜の一人になってあの場にいるのではと錯覚してしまうほど、恐怖心を煽られる。特に壁画がとても有効に使われていて、背筋がとても寒くなりました。それから祭壇から生首がゴロゴロと転がるシーン。弾むその首から、無駄なほど肉の感覚が伝わってくる。怖い。祭壇の頂上で仰向けにされる。逆さまになった視界に映るラリった目をした男たち。限界。ここが限界。
観客の限界を悟るように、そこから一時恐怖から逃れられるも、またすぐに新たな恐怖。上から上から重なるようにして降りかかってくる恐怖に、精神が結構参ってくる。何故ここまで執拗に描写しなければならないのか、悪趣味にも程があるダロとむしろ逆ギレしたくなる。
鑑賞して数日経った今、命の危機を感じる事、命を奪われる恐怖心、それに立ち向かう勇気…生きるという意味や生命の重み、そういったものをじわじわと感じてくるようになりました。命を奪われるというのはこんなにも残酷な事なのだ、こんなにも耐え難く苦しいものなのだ、こんなにも震えるほど悲しいものなのだ。理性では分かっている事を、まさに悪趣味な方法で「本能に訴え」てくる。そんな感覚。数日経ってようやく監督の伝えたかった事がしっかり伝わってきた気がしました。
冒頭でも書いたジャガー・パウの美しさ。それはひたむきに、まっすぐに生きる人間の美しさだったんだと実感しました。懸命に生きる人間の美しさには目を見張るものがあります。あんな綺麗な目をして生きている人って、今の世の中どれくらいいるのだろうかという思いが、ふと頭を過ぎりました。人は本来、あんな目をして生きていくものなんだよね。それが本来の姿なんだよね。深く感銘を受けました。
ただ、マヤ文明崩壊前夜というテーマには沿っていないというか、史劇を想像していた為どこか物足りなさを感じたのも事実。もう少し文明崩壊を絡めた展開だったら良かったと思います。
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07.06.18 記
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