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[コメント] クワイエットルームにようこそ(2007/日)

明るくコメディタッチでもあるが、根底には悲しみが流れている。その悲しみが基本的には明るく描かれているため、一見分からないが、その悲しみは後々ボディブローのように効いてくるのである。
Master

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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鑑賞後すぐはなかなか面白い映画だったという評価だったが、時間がたつにつれて悲しい映画なのではないかと思うに至った。

愛する(べき)者を守れ(守ら)なかった悲しみ。

明日香(内田有紀)や、鉄雄(宮藤官九郎)が抱える悲しみ。

明日香は元夫と本来産まれてくるはずだった娘。鉄雄は明日香。明日香が抱えるものも大きいが、明日香に「私と付き合うという事は、あなたにとって罰ゲームだった」と言わせてしまった鉄雄が抱える悲しみは非常に大きいと思う。ある意味、どんなことでも「ネタになるか否か」で考えるような「面白い国の住人」がただ頭を垂れて泣く事しか出来なかったことからも想像が出来る。

心を通い合わせられる人と、関係を断ち切らなければならない悲しみ。

ミキ(蒼井優)が抱える悲しみ。

彼女はおそらく無自覚である。使命感も感じているわけであるし。だが、明日香に最後に渡した色紙に「これを捨てろ」と書くことは、結局は自分との関係もなかったことにしろと言うに等しい。病棟の中で「人は多いが孤独だ」という自覚を持っている人間が、掴んだ関係性を断ち切れと自分から言ってしまう事は悲劇的であると僕は思う。

描かれている事は非常に悲しい事である。それでも希望を脇に抱えて進んでいこうとしているところが描かれているから、それほど強い悲壮感は感じない。結局、それが人生なのだから。

(評価:★4)

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