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[コメント] アイ・アム・レジェンド(2007/米)

いろんな意味ですごく怖い映画だが、前半積み上げたリアリティが後半で崩れるのが意外にして残念。びっくり音響を使う演出も私的にはハズしている。荒廃したNYの街におまけして☆4。レビューは完全にネタバレなので注意。(071223にちょっと追記)
サイモン64

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







平穏で快適な生活を失い、家族を目の前で失い、治療法のないウィルスによる感染症で世界中のほぼ全員が敵に回っちゃってるけど自分はその仲間になれない抵抗力保持者という悪夢的な、普通だったら発狂するか自殺しちゃうような状況において、主人公の心のよりどころは愛犬と、そしてワクチンを見つけていずれ人類を救いたいという未来への強い希望だけだ。

自分だったら簡単にへこたれてしまいそうな、いろんな意味ですごく怖い状況を、こつこつと丁寧に描写を積み上げているので、荒廃したNYを舞台に繰り広げられる主人公の行動にはリアリティを感じる。レンタルショップでマネキン相手に友達ごっこをするところにしてもそうで、感情移入しながら見ることができた。

ただ、主人公は感染者を評して「知性が低下した原始的存在」と断定するものの、実際のところ感染者は組織的だし犬も飼ってるし、奪われた女を取り返そうとしている様にも見えるので、知性や知能に関する制作者の一方的な決めつけを感じてしまう。「鯨やイルカは賢いから殺さないけど、牛は食っちゃう」みたいな欺瞞を感じる。

さらに、主人公が現在置かれた状況に至るまでが断片的な夢や回想で描写されるに過ぎないので、非常に思わせぶりな演出のにおいを感じてしまうのだ。ここは時間軸通りにストレートに描いた方が、主人公の孤独がもっと描写できたのではないかと思った。

さらに、ウィルスにネズミや犬は感染するのに、同じほ乳類のライオンや他の動物が感染していない理由もよくわからないところだ。

そういう基本的なツッコミどころは目をつぶるとしても、後半に突如登場する別の生存者の乗ってる車がやたらとピカピカなのも不自然だし、その生存者が涙目で主張する「非感染者の村が存在する」という説の根拠が「神の啓示」だなんて、あまりに強引すぎないか?科学的事実を積み上げてワクチン作ろうとしてる主人公が、そんなキテレツな話に賛同できないのもそりゃ無理ないだろ。

最後に登場する生存者の村もいくら武装しているからと言って、高さ数メートルの貧弱なフェンスでは、強烈な運動能力を持っている感染者相手ではどうにも防ぎようがないだろう。

後半がとってつけたようにナイト・シャマランぽくなってくるのがものすごく違和感を感じる部分で、非常に意外だったし残念だ。 また、生存者の独り言だけで「彼は伝説になった」とか言われても、こっちも当惑してしまうのだ。このあたりは『ポストマン』の様な強引さを感じた。

たびたび出てくるビックリ音響による演出も、この映画には合ってないように感じる。結局ホラー的味付けをしたいのか、カタストロフィ映画にしたいのか腰が定まってないように感じるのだ。

そうは言っても前半部分の積み上げが非常に良いのと、荒廃したNYの迫力におまけして☆4。

〜〜〜

2007/12/23 これを書いた後で皆さんのレビューを見て感じたのだが、珍しく深くネタバレしてレビューを書いている人が多いのが印象的。やはり随所にあるツッコミどころや後半の破綻に皆さんうっぷんを感じていたのだろうかと興味深かった。

(評価:★4)

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