[コメント] 休暇(2007/日)
静かな日常の中に、静かな殺人が横たわる。人と人とが心のすれ違いを起こすように、生と死も時に誤解を生みながら、静かに交差する。心や体を交わす「関係」が何を意味するのか、監督の思いが伝わる作品。死刑囚の日常を知るにも良いだろう。080924
シンプルな二つの構造。死刑囚を収容する拘置所の様子と、そこの刑務官の結婚と新婚旅行の様子とが、カットバックで描写される。それは、死と生との対比でもある。
「死刑」と「結婚」の「儀式」がほぼ同時に行われるように、辿りつく目的を「死」と「生」にしたシンプルな二つの対比に、多くの重なり合う象徴が配置されている。絵を描くのが好きな設定として、死刑囚と6歳の子が重ねられているのが、ストーリーのツボだろう。一人は離れ、一人は近づく対象。
この作品、全体的に描写が静かなのだが、ときどき、波風が立つ。それは、人物達が心のすれ違いを起こして感情的になった瞬間だ。感情を、そして体をぶつけあい、互いに交じり合うことで何らかの作用をもたらし、また静かな日常に戻る。感情の波風は、人間関係を強固にし、時に破壊する。もしかしたら、死刑囚の犯した殺人も、そうした「波風」の一つに過ぎなかったのかもしれない。
主人公が死刑囚と子供を抱きしめるカットは、一体、何の「交わり」を対比させたのだろうか。また、たびたび、(わざとらしいくらいに)登場する「蟻」が意味するものは何だったのか。
今の時代、私達は、いろんなものを遠ざけているように思う。その結果、自殺のために人を殺すという死刑志願者が出てくるようなややこしい事態を招いている。嫌いなものも、好きなものも、今一度、勇気を持って抱きしめて、それが何なのかを確かめてみる時期なのだろう。
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