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[コメント] 見知らぬ乗客(1951/米)

アイデア満載な映像&演出オンパレードにも感嘆しっぱなしだが、ひじょうにわかりやすい音楽の使い方も絶妙。また、ヒロインに典型的な美女だけではなくおきゃんなメガネっ娘も配置してくれているあたりには、様々なニーズを満たすための配慮さえ感じる。
tredair

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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ただ、物語の結末はおおいに気に入らない。

なぜなら、殺された妻にかなり肩入れしてしまったからだ。よっぽどヤな感じの派手な女性なのかと思えば、登場シーンのあまりの質素な雰囲気にまず脱力。ダンナが売れていなかった頃にはそのレジ仕事で家庭を支えていたのでは?とさえ想像してしまう、あまりに貧乏くさい様子にびっくりした。

男たちとのデート先だってバスで行く遊園地だし、食べたいとねだっているものだってポップコーン!だし。 浮気して他の男の子どもを作ったと非難されてはいたけれど、舟のシーンを見た限りでは単にヤられちゃったというか事故だったのでは?とさえ。テニス選手として登りつめることばかりに一生懸命だった夫とはうまくいかず、きっと寂しかったんだよね。それでも頑張って地味に働いて家庭を支えて、それでちょっと愚痴ったりしたら、ここぞとばかりにダンナは自分よりずっと綺麗で若いお嬢さまと浮き名を流したりして。そりゃー、そんな都合よくは離婚に応じないでしょフツー。だって主人公のしたことって、つまり「糟糠の妻は切り捨て」じゃん。

犯人だって確かにちょっとまずい人だけど、犯人の母親の描くうひゃあ!な絵を見たらもう何も言えなくなっちゃう。親子で病んでるんだもん。そのうえで「父親を殺してくれ!」だなんて、彼のその心情を思うと涙が出そうにさえなる。だって彼はわかってるんだよ、自分がこうなった原因は父親にあるんだって。でも自分ではどうもできないし母親も(たぶんそんな父親のせいで)とうに壊れてるし。彼はマザコンという設定になっているけど、それも見ていて辛すぎる。だって彼は、夫に向けられない愛情をすべて息子に向けがんじがらめにしてしまった(せざる得なかった)母親に、マザコンにさせられてしまっただけなんだもの。

それなのに、主人公はあまりに冷たい。電車の中で「父親を殺してほしい」と聞いたときから、もっと親身に彼の話を聞いてみるぐらいすればよかったんだよ。明らかに異常だっていうのは、何かよっぽどの事情があるんだってことは、そのときからわかってたじゃん。とは言えまぁその時はまだまだ他人だしね。私だって同じような目にあったら怖くなって無視しちゃう可能性大だし。でも、本当に妻を殺されて「あいつはマジで変」と思ったときも、警察に行くのをためらったというのはわかるけど「父親に話をしに行く」ぐらいはしてもよかったんじゃないのかなぁって。とりあえずその父親がどんな人なのか、どうにかして探ってみるとかさ。でも、彼は放っておいただけなんだよね。火の粉が直接かかってくるまでは、なんのかんの言って自分にとって好都合だったし、彼は何もしなかった。

というわけで、私はかなりこの映画の主人公に反感山盛りで見ていたわけだけど、そんな彼が見張りの刑事に「テニスは今にやめて、その後は政界にでも入るつもり。」なんてことをのうのうと語った瞬間にはもうキレそうになった。これはヒッチなりの「こういう自己中なヤな男こそが政治家向きなんですよ。」というブラックユーモアなのかもしれないけど。

それでも私は、奴が心底ギャフン!というようなオチをつけてほしかったなぁ。結局は、彼にとってラッキー極まりないラストなんだもん。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)ぽんしゅう[*] モノリス砥石[*] ジェリー[*] けにろん[*]

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