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[コメント] チェ 39歳 別れの手紙(2008/米=仏=スペイン)

正直、第一作が「つまらない」と感じた皆さんには積極的にお薦めできないことを明言しておこう。実際、これは負け戦の悲惨で荒れすさんだ戦士たちを描き続ける「退屈な」映画である。しかし、富裕な資本主義国・日本の人間から観れば、あまりにも豊饒な「退屈」であることを自分は敢えて強調しておきたい。
水那岐

冗談めいた書き方をすれば、これは「ドキッ!ゲバラだらけの革命戦線!!ポロリもあるよ(ないない!!)」というくらい顎鬚を生やしたムサい独立の戦士が闊歩する映画であり、しかも緒戦には勝利をおさめたものの敵は他国からの協力を得て立ち上がり、その結果主人公達は敗退に次ぐ敗退を重ね、疲弊し、空腹に苛まれ、病魔に冒されながらも歩き続ける…そんな映画だ。前にも増してカタルシスなどかけらもない。そんな映画になけなしの小遣いをつぎ込めるか、と思われる方も当然大勢いるだろう。もっともだ。

だが、折角第1作を眠気を噛みしめつつ見た貴方なら、ぜひこの疲労感を味わって欲しい。無力感を浴びせられ、脱力感に肩まで漬かり、絶望のどん底を舐めてみて欲しいのだ。映画は何も『ジョーズ』や『スターウォーズ』ばかりじゃない(クイーンふうに言えばね)。タメとかオチとかがあるだけが能じゃないのだ。ヒーローとしてのゲバラしか知らなかった人には、これを観てからこそ『モーターサイクル・ダイアリーズ』(まあ、個人的にはフェイバリットな作品です)を見返して滂沱の涙を流す資格も与えられようというものなのだ。生まれてから死ぬまで、スーパーヒーローであり続ける人物なんてそういるものじゃない。こういう人物であったからこそ、輝かしい半生を噛みしめる意味も生じるというわけです。お判りですかな?自分の歴史を歓声と拍手だけで振り返ることの難しさを。ゲバラでさえこうだったことを知るためには、この絶望の行進の何万分の一だけでも、経験してみることはけして無意味なことじゃない。そういう映画経験も、俺は充分アリだと思っているのです。

騙されたつもりで首を突っ込んでみませんか?もちろん『チェ 28歳の革命』を体験してからね。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)牛乳瓶 おーい粗茶[*] Keita[*] 甘崎庵[*]

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