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[コメント] ジェネラル・ルージュの凱旋(2009/日)

ミステリーというよりも、骨太でハードなサスペンスに仕上げられ、実に見ごたえのある、ガツンとくる映画になっている。前作の不足分を完全に補って余りある、良質な作品だと思う。
シーチキン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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救急救命医療と病院経営という、現実には二律背反させられているテーマを背景に、クライマックスでは緊迫感あふれるシーンと、竹内結子の「報道ヘリは飛ぶのにドクターヘリは何故飛ばないの」というたった一言の台詞で、この問題の急所をずばりとえぐった演出は見事だった。

こうあってほしいという希望と、そうなっていない現実とが改めて眼前に繰り広げられるかのような錯覚と、その上でなお胸に迫るものを感じさせる。とりわけ、大勢の患者が搬送される玄関で、色分けカードを自分で変更するものや、息があるにもかかわらず一人も医者のいない一画に運び込まれる患者と家族の描写は、あざといと言えばあざといが、それでも、万全の救急救命医療体制が希望のごとく実現したとしても、なお残される厳しい現実として、受け入れるだけの覚悟がありますか?と問いかけられているような気がした。

俳優たちの出来も非常に良かった。特に堺雅人は、驚くほど完璧な演技で、天才肌みたいな雰囲気を作りながらも、同時に「ジェネラル・ルージュ」の名に恥じぬ一人の人間の姿を見せてくれたと思うし、そのパートナーたる羽田美智子もふさわしい存在感を発揮していた。

映画全編を通しても緩急織り交ぜた演出で、だれることなく終盤まで一気に見せてくれたし、前作のメンバーの扱いも控えめでよかったと思う。ただラストの阿部寛の登場だけはいらなかったんじゃないか。あれで緊張感をぷっつりと断ち切ってしまった。

まあ、全体を見れば、本作は完全に堺雅人の映画になっているから、ああでもしないと主役の顔が立たないということかもしれないが、あれだけはなくてもよかったシーンだった。そうはいかないのが現実です、と製作者が言い訳しているようにも見えてしまったなあ。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (5 人)まー[*] chokobo[*] ぐ〜たらだんな 死ぬまでシネマ[*] セント[*]

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