[コメント] 96時間(2008/仏)
荒れ狂うプロ、毒を以て毒を制す。暴力という毒への疑義抜きに毒を語るのは今時野蛮か無自覚と思うが、そのへん眼中に一回入れた上でぶっ飛ばしている感がある。銃口を外道に向けるニーソンの落ちくぼんで昏い眼窩などの一匙演出が的確。昨今、正義の暴力をエンタメに仕上げる難しさを思うと、なかなかに困難な「快感と倫理」のバランス上でつま先立ちするスリル感を覚える。ニーソンという人選はその印象の絶対条件。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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良くも悪くも面白い。「躊躇のなさ」を演出する編集のテンポの良さも確か。
「愛」と「ストーキング」があまり大差ないこと、娘がしょうもなければしょうもないほど傾倒するニーソンの危険物純度が高まって見えるあたりもよいのだが、娘の親になった私にはこれを笑う資格はない。多分。今更な題材、「わかりやすい正義」の突き詰めの、この21世紀初頭という提示タイミングが、あらすじだけ読むと単調に思える味わいに深みを与えていると思う。
ところで、まさにニーソンが娘を救出するシーン。問答無用にニーソンが首魁を撃ち倒すが、「パパの仕事を知るのが怖い」と語っていた娘が、大義はどうあれ父が殺人者であることを決定的に知ることになるこのシーンで、このリアクションについてどう考えるか。ここを突き詰めて考えても面白いと思う。また、ニーソンが、『宇宙戦争』(スピルバーグ版)でトム・クルーズが見せたものに準じる表情を見せなかったこと。このへんも同時代的には興味深い点。
ニーソンと腐敗警部との食卓シチュエーション。シャレが通じない男の冗談っぽいシチュエーションは、やはりいつだって面白いのだ。
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