[コメント] 翼よ!あれが巴里の灯だ(1957/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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「愛息誘拐殺人事件」:過熱したマスコミは捜査妨害に始まり、息子の棺を開けてスクープ写真まで撮り、その遺体の発見現場の周辺には野次馬と露天が連なり、英雄の悲劇を楽しんだ。州を越えた犯罪を扱うリンドバーグ法のきっかけになり、さらにA・クリスティーはこの事件を元に『オリエント急行殺人事件』を書いた。
「親ナチス」:アメリカの対ドイツ戦参戦に強く反対した。その姿勢は親独派とされ国家的英雄は堕ちる。
「リンドバーグ日記」:太平洋戦線に従軍した彼はニューギニア等の戦場で日本兵捕虜に対する虐殺と死体に対する蹂躙の様子を日記に記した。国家的英雄だった彼は言う。「これほど祖国を恥ずかしく思った事はない・・」
ビリー・ワイルダーはチャールズ・A・リンドバーグとは友人関係にあったらしく、かなり遠慮した描き方になってしまった。例をあげると出発前夜は精神が高ぶって眠れなかったのではなく、あるウェイトレスが彼の部屋に出入りした事実を意図的に除外した。
上記したように彼の人生はドラマティックだった。大西洋無着陸横断を成し遂げた事実は、航空機の時代を切り開いたという紛れも無い功績で、そしてまた当時のアメリカ人が欧州に抱いていた「劣等感」を一掃した。その意味で彼はまさしく「英雄」になった。
しかし、この映画制作時点で「英雄:リンドバーグ」は横断飛行を上回るような数々のドラマでボロボロになっていた。ビリー・ワイルダーは何故、この一部のエピソードだけを抜き取って映画化したのだろうか?その後のドラマが尋常でないので違和感が残る。
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