[コメント] 私の中のあなた(2009/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
私事で恐縮だが、この夏、父が心筋梗塞で倒れたとき、私は医師に「あと15分施しても生命反応が薄い場合は救命処置を打ち切りるが構わないか。また、そのまま延命処置を施すこともできるが、この状況からみて、今後はいわゆる植物人間のような状態のままで、その状況が好転することはおそらくない。どのようにするか決断してほしい」と告げられた。私は考えた。どのような姿であれ、1日でも長く父には生きていてほしい。そのためには延命処置を…。するとそのとき、隣にいた母が突然口を開いた。「主人は生前、延命処置を望んでおりませんでした。先生、大変お世話になりました」…。そんな母の言葉を受け、私は医師にひとつの決断を下した。そして救命処置は打ち切られ、父はあの世へと旅立っていった。
正直いって、今の私には、あの時の自分の決断が本当に正しいものだったのかということは分からない。というか、あの直後は、自分が父の命を奪ってしまったのではないかという思いにさいなまれて、心の底から苦しんだ。おそらくその苦しみの思いは、私から消えることはないだろう。しかし、時々父の写真を見ていると何だか微笑んでいるようにも見えるときがあり、そんなときは私の心も少しは安らぐのである。
この映画は、私にとっては本当に苦しいものであった。けれど、観てよかったと本当に思う。映画自体は決して完成されたものではなく、多彩な軽いエピソードを整理すればもっとすっきりとしたものになったのにという不満がないわけではない。けれど、そういったことを超えて自分の心を捉えて離さない映画というものもあるものだ。
この夏の、ひとつの決断は、少なからず私というものを変えた。ケイトの死が、フィッツジェラルド家の人々を変えたように。そしてまた彼らと同様に、私の中に父はいつまでも生き続けているのである。
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パーティに行くためにかつらをつけ、美しく化粧を施した娘を見送る父・ジェイソン・パトリックのあの表情と、キャメロン・ディアスの女優としての成長・成熟ぶりが忘れられない。ので、あえて追記。
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