[コメント] タイタンの戦い(2010/米)
2010.5.18 TOHOシネマズなんばで鑑賞。
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ギリシャ神話の中でもペルセウスのアンドロメタ救出劇は、大昔の人が考えたとは思えないくらいの白眉だ。黄金の雨となってダナエのもとに降り注ぐゼウス、生まれ持った運命、必ず成就される親殺しの予言、神の呪いにより怪物の前に差し出されるアンドロメダ、空飛ぶサンダル、よこしまな魔女の三姉妹、目を合わせると恐怖のあまり石になってしまうというメドゥーサ(髪の毛の代わりに蛇が生えてる)、直接見ずに鏡に写したメドゥーサを倒すペルセウスの機智、アンドロメダの危機一髪ペガサスで乗り込んで切り落としたメドゥーサの首を差し出してクラーケンを石に変えて倒すペルセウス。
この物語が彫刻や絵画のモチーフになるだけでなく、その断片ははるか後世の文学にも多数転用されている。冒険活劇としてのギミックをドカ盛り満載てんこ盛り大サービスの物語である。子供の頃からなんどもギリシャ神話は読み返しているけど、中でもペルセウスとヘラクレスの物語はものすごく好きだ。
物語自体は Wikipedia のあらすじだけでも十分堪能できるくらいの楽しさだが、さすがにこれをまともに映画化すると、作劇上唐突な部分もあるし、2時間の尺には伸ばせないところもあるので、少々改変して間延びさせましたというのが見え隠れするのがこの映画だ。
こんなにもオリジナルのギリシャ神話を改変して間延びさせ、結果として水増し感がものすごく高い映画ができてしまったのは実に残念だ。
クリーチャーの造形も、いかにも現代的な作りになっているのも少々残念な部分だ。反対に、原作には登場しない砂漠の異人が、取ってつけたような造形になっているのも不思議なちぐはぐさである。
神の糧が「人々の愛」というのも新説にして珍説だが、ただ、そうするとギリシャの神々が今日(こんにち)息絶えたのも納得ではある。
アクション映画としてのできばえは十分上だとは思うが、どういうわけかギリシャ神話を映画化すると、自分の心のなかにあるイメージよりは遥かに矮小化してしまうのである。期待が大きすぎるのかもしれない。
話は変わるが、なぜ特撮映画から緊張感が失せてしまったのだろうか。昔の映画だと、本当にセットやミニチュアセットを作ったり、クレイアニメを撮ったりしなければならないので、出来上がった映像は文字通り「血と汗と涙の結晶」だ。結晶は小さくて純度が高いほど人の感動を呼ぶのではないかと私は思う。CGで自由自在な映像は、そんな感動を呼びにくいのだと、この映画を見ながら思った。
キャストはなかなか良く、結構豪華な面々をずらりと揃えている。あまり期待せずに見る分には楽しい映画だと思うが、ギリシャ神話に思い入れの深い人にはあまりお勧めできない。
サム・ワーシントンは好演。彼の優しい目つき・顔つきは、なかなかハリウッドにはいないタイプで、今後の活躍が期待される。ただ、彼の劇中の髪型は、綺麗に刈り込んだ坊主頭だが、あの髪型を作れる精度のはさみがあの時代にあったのだろうかと不思議でならない。
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