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[コメント] インセプション(2010/米)

日常を襲う唐突な銃撃と追撃、不安と呼応するかのような空間の歪み、風雪に閉ざされた要塞の美しき威容、想いの重圧に耐え切れず崩れ落ちる人工建造物。展開の巧みさもさること舞台としての夢(心)を具現化する造形が見事。そして、傷心むき出しの純粋恋愛映画。
ぽんしゅう

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







恋愛とは相手に心を占拠されてしまうことである。まだ恋愛に対して無防備だった10代の頃に、そう感じた経験はないだろうか。いったん人を好きになると、その思いはみるみる増殖しはじめて、心のなかの領域をじわじわと占領しはじめる。そして、相手のことで頭がいっぱいになり胸が痛みだす。「寝ても、覚めても・・・」というやつだ。

コブ(レオナルド・ディカプリオ)と妻モル(マリオン・コティヤール)の恋愛感情は、あまりにも純粋に過ぎたようだ。50年かけて二人が築いた思い出の街とは、互いに互いを求め合い、相手の心を侵食し続けたあげく互いの心を占領してしまった証しだ。現実から切り離された二人の間だけで完結する恋愛感情とは、現実世界にとっては無でしかない。

純粋な「恋心」がいき着いた、もう戻れない無の領域でモルにほどこされた死の「インセプション」。映画の裏側を支配するモル(マリオン・コティヤール)の情念、すなわちコブ(レオナルド・ディカプリオ)の想いの、なんと一途で切ないこと。本作は極めて優れた着想のファンタジー&アクション映画であるとともに、純粋すぎた男と女の恋愛映画として私の胸を打った。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)ゑぎ[*] TM[*] shiono[*]

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