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[コメント] ゾンビランド(2009/米)

あまりにも小さな物語。人間の醜悪を描くに格好のはずのゾンビ状況を用いて性善説的な青春と連帯を語る仕掛けに容易に感動させられてしまうのは、それがかりそめのものであること(親兄弟や恋人・友人であってもゾンビ化したら殺さねばならない)を私たちがすでにゾンビ映画から学んでいるからかもしれない。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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ウディ・ハレルソンはまあ当然としても、ジェシー・アイゼンバーグの巧いこと巧いこと。「僕たちはみんな人間不信だったんだ」とか何とか心理の展開を言葉(アイゼンバーグのモノローグ)で補足する方法の多用も彼の巧さで許されているところが大きいが、何より無言リアクションの顔がとっても面白い。

ただし「遊園地」を舞台としておきながらこの出来というのは、ゾンビ・アクションとしてはちょっと期待外れ。ハレルソンがゾンビに対して憎悪を抱く理由(=息子を喪ったから)に比べると、遊園地に行かなくてはならない理由(アビゲイル・ブレスリンが遊園地に行きたがる理由)はどうしても弱い。ルーベン・フライシャーにしても作劇上の理由づけが弱いことは承知の上だろうが、それでもなお遊園地に行くというのだから、やはり彼には勝算があるのだと、つまりそれ相応のアクションやギャグの充実が待っているのだと期待してしまうのが観客心理というものだろう。「ゾンビ」と「遊園地」の組み合わせなんて、バスター・キートンだったら二巻物の短篇を一〇作ぐらい撮れてしまいそうな魅惑的なアイデアの宝庫ではないのか。

エマ・ストーンがラストでアイゼンバーグに本名を打ち明けるというのは嬉しく期待通りだ。それに対してアイゼンバーグが本名を告げ返さないのはどういうことだろう。ここで初めて明かされる「アイゼンバーグの本名」で爆笑なり微笑ましさなり感動なりを持ってくるものとばかり思ってしまった。ストーンにだけ耳打ちして観客には聞かせず、彼女の驚いた顔で終幕(そんなびっくりする名前って何なの? と謎を残して)、とか。

 オープニング・タイトルバックの演出は『ウォッチメン』からの拝借ですね。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)KEI[*] DSCH[*] 赤い戦車[*] 煽尼采

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