[コメント] クロッシング(2009/米)
ノワール的な質感が大いに気に入った。冒頭映し出される夜の墓場から、ヒリつくような死の匂いが映画に纏わりついて離れない。重厚な緊張感が持続する。実際、主要人物3人はいつ死んでもおかしくない状況にあるのだ。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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イーサン・ホークはその死に際し、部屋の床に置いてあるランプの光が彼の顔を優しく包み込む。またドン・チードルも撃たれた直後に、近づいてくる車のランプによって顔を明るく照らされている。これはまるで混沌とした現世からの解放のように映る。
対してリチャード・ギアは五体満足で生還しただけでなく、称賛されるべき善行をもどうにかやり遂げた。にもかかわらず、カメラの前に歩み寄ってくる彼の最後の顔は全く晴れやかでない。それどころか周囲への警戒と緊張に強張った表情とさえ思われる。それもそのはずだ。彼は今後も映画内の混沌と共に生きてゆかねばならないのだから。
つまり、彼はこの負に満ちた世界と闘争する決意を表情に込めて、救急車の横からカメラ手前に1カットで毅然と歩いてくるのだ。彼の顔に光が指すのがいつになるかは誰にも分からない。なんとも重苦しい結末だ。
それにしてもパトリック・ムルギアというカメラマンは一体何者なのだろうか。都会の闇がこれほど魅力的に撮影されている映画は久々に観た。個人的に要注目の撮影者だ。
・鏡面を利用した演出は何度もやられると多少しつこいか。
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