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[コメント] スプライス(2009/カナダ=仏)

「ダンス」の映画だ。二体のクリーチャが「ジンジャーとフレッド」と名づけられ、ドレンを生み出すことになる女性のDNAが「ダンスの相手」に喩えられた時点で予告されていたことだが、それにしてもエイドリアン・ブロディデルフィーヌ・シャネアックのダンスシーンの倒錯しまくった美しさときたら!
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**ネタバレ注意**
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もちろん出来事としてはブロディとシャネアックが「結合」するシーンのほうが刺激的なのだけれども、複雑に倒錯した切ない恋愛映画としてのピークを示しているのはやはり先のダンスシーンだ。だから私はふたりの恋愛映画を最後まで見たかったという思いを捨てきれない。彼女に愛着を覚え、可愛いとさえ思い始めていた観客は決して私だけではないはずだ。それは女性としてというよりも「子供」としての可愛さだろうけれども(『ある日、突然。』という私の好きな映画には「(人間だろうが動物だろうが)赤ちゃんなら何だって可愛いさ」という台詞があります。まったくその通りだなあと思います)。ゆえに、ドレンを殺害しようとする映画が前もって彼女を性転換させておくのは、作劇上の「優しさ」であり、同時にまた「逃げ」でもあるだろう。逞しく男性化してブロディやサラ・ポーリーを襲うドレンはもう私たちの知っているドレンではない。彼女だった彼が殺されようがどうしようが、もはや観客が深い傷を受けることはない。

(評価:★4)

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