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[コメント] 英国王のスピーチ(2010/英=豪)

物語自体は坦々とし過ぎて他愛ないが、王と国民とが契約によって認め合う王国内の事情を垣間見させる王国だからこそ、紡ぎ出される悲喜劇には興が乗る。そして国王と、彼と対等に渡り合おうとする教育者との演技合戦は見事と言えよう。
水那岐

己の器には重過ぎる重責を背負わされる国王を演ずるコリン・ファース、彼に媚びることなく信念のもとに教育するジェフリー・ラッシュの渡り合いは見ものではあった。ふたりの間に立って、あくまで王妃としての自信を崩さないヘレナ・ボナム・カーターの位置づけの体現も素晴らしく、作品の価値は彼等の存在によって半分は支えられていると認めていいだろう。

作品のテーマ自体は凡庸だが、王となった人物の弱さ・脆さとそれを支えるオーストラリア人(つまりは流刑地の「棄民」の子孫)との葛藤を描く構図には、さすがにこの日本から見れば描けない物語として羨望を感ぜずにはいられない。『太陽』ですら問題作扱いされる、この「売国奴」なる醜悪な言葉が甦った国家には、過去の君主をめぐるエピソードすらスクリーンを極右に引き裂かれる恐怖で映画化など想像だにできない。悔しいがそのあたりが国民の成熟度の差ということなのだろう。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)死ぬまでシネマ[*] けにろん[*] ダリア[*] のこのこ

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