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[コメント] イリュージョニスト(2010/英=仏)

「心温まる話」という世評なのかもしれないが、私には残酷な話に見える。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







シルヴァン・ショメの作品は『ベルヴィル・ランデブー』の他、実写も含め短編も何本か観ているのだが、その作家性というか思想はイマイチ分からない。デブ好きだってのは分かるんだけど。

しかしその作風には特徴がある。 極力台詞を排し、デフォルメされたキャラクターと動きで表現する。 なるほど、それはジャック・タチのそれと類似する。 もしかすると、映画監督ジャック・タチの正当な後継者はシルヴァン・ショメなのかもしれない。

この映画は、タチが愛娘のために書いた脚本だそうで、この映画に見え隠れする思想は、確実にタチのものだろう。 タチは晩年、例えば『プレイタイム』が顕著だが、“移りゆくもの”を描こうとしていたように思う。 この映画も同様だ。 移りゆく時の中で取り残される者が描かれる。 時代遅れの芸人もそうだし、成長していく少女に取り残される老人もそうだ。 とても哀しく残酷だ。 つい喜劇役者の先入観で観てしまうが、ジャック・タチが描こうとしたのは“悲喜劇”だと思う。

特に少女は、若さ故の残酷さを見せる。 すっかり都会の女の扮装をした彼女は、かつての自分のような田舎娘に目もくれない。 そんな少女(=タチの娘)の成長に取り残されることを恐れたタチは、自ら身を引く話を書いた、というのは考えすぎだろうか。

(11.04.03 シネマシティ立川にて鑑賞)

(評価:★4)

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