[コメント] 苦役列車(2012/日)
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主人公は昭和42年生まれの19歳。俺、同い年(笑)。つまり舞台は昭和61(1986)年頃で、バブル絶頂期。 当時大学生だった私ですら(大学生だったからということもあるが)「千円札なんて小銭」と思っていた時代に、全財産の本を売っても380円にしかならない男の物語。
この映画はバブル経済を直接描写しないが、この時代を間接的に描写する。高良君の彼女のクダリだ。 こういうマスコミ志望の勘違いサブカル女が世の中にゴロゴロ出始めたのって、この頃だよ。中沢新一のトークショーの司会するとかさ。確かに俺らも呼んだもん、中沢新一(笑)。
配給会社は“学校教育的な道徳観”しか大衆に理解されないと思ったのだろう(知らないけど)。「愛すべき、ろくでナシ」とか「メンドくさいけど、ほっとけない」という宣伝文句を付けている(公開時)。 どこが!って話ですよ。 愛すべきところなんて全然ないし、ろくでナシどころかヒトデナシ。こんな奴ほっとけや!
この話は、そういうクソ豚野郎でなければ物語として成立しない。中途半端な同情を受けたり、恋愛が成就するような中途半端なハッピーエンドでもいけない。
なぜならこの映画は、「全てを失った男がペンを手にするまでの物語」だからだ。 そして、「己の不遇を誰か(父親)のせいにしていた男が、自分のせいで全てを失っていることに気付くまでの物語」でもあるからだ(原作がどうかは知らないけど)。
自らの手で幸せを逃してきたことに気付いた男が、自らの手で何かを掴もうとする瞬間、男は丸裸で疾走するのだ。 役者の使い方、原作の扱い方を含め、山下敦弘の調理の腕は本物だ。
(12.07.15 渋谷TOEIにて鑑賞)
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