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[コメント] 悪魔の手毬唄(1977/日)

結局金田一って主人公でも探偵でもなく、狂言廻しなんだと思うのです。
Myurakz

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 前作同様「犯人探しのどうでもよさ」が際立ちます。そもそもキャスティングの段階で既に真犯人が匂い立ってる上に、話が進むに連れその匂いがガンガン強まってますし。まぁ実際市川崑としちゃ本作における犯人探しなんて既にどうでもよくて、むしろ「ドラマや映像を魅せること」にその目的を置いているんでしょう。事実独特のリズムを持った画面作りは今作でも冴えまくっています。

 つまるところ「推理に重きをおかない推理物」という本来ならあり得ない成り立ち方をしている本作ですが、これがまたこのシリーズにピタリとはまっているんですよね。結局金田一って、このシリーズに於いての主人公ではなく狂言廻しなんだと思うんです。地縁血縁の絡まった古い因習の中で、「部外者」として淡々と物語を見続けるという役割を負った狂言廻し。だからこそ彼はいつも殺人を防げないし、犯人も死んでしまうんです。そう考えると、推理に重きを置かないのも納得できるように思えます。

 そして我々が金田一というフィルターを通して目にする主人公は、今作であれば若山富三郎なんでしょう。彼の黙して語らぬ恋心の周囲にだけ、何だか「陰惨な寅さん」みたいな空気が流れててたまらないです。また金田一といる時の穏やかな顔、事件現場のシビアな顔、オタオタしたときの頼りない顔など、一作で随分と幅のある表情も観せてくれ、それらの総括として「格好いい」と思える役を演じてくれていました。

 それにしても金田一と磯川警部が親しくなった「命がけの事件」ってどんなだったんでしょうね。あの二人の距離感から察するに、それはそれはかなりの命がけっぷりだったんだと思われます。観たい。正直メチャメチャ観たい。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)sawa:38[*] くたー[*] ぽんしゅう[*] ペペロンチーノ[*]

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