[コメント] 悪魔の手毬唄(1977/日)
このおどろおどろしい横溝正史の世界観の見事さ。ミステリとしても、人間ドラマとしてもシリーズ随一の傑作だろう。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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薄暗い映像ともの悲しい音楽が横溝正史の世界を実によく表している。ミステリとしても人間ドラマとしても,シリーズ中で一番よく出来ており,まとまりもあると思う。
岸恵子(リカ)の醸し出す悲しみと情念,若山富三郎(磯川警部)の枯れた味わい,そしてどこまでも飄々としている石坂浩二の金田一,この三人のコントラストがなかなか良い。他の作品では等々力警部を演じ,「よーし,わかったぞっ!」のセリフでいい味を出している加藤武(この作品では捜査主任役)も,この磯川警部の前では完全に霞んでしまっていた。
それにしても,金田一ものでは,ラストで犯人が自決してしまうことが実に多い。金田一がヌケていて詰めが甘いのか,それとも優しいが故に犯人を見逃してやるのかは微妙なところだが,特に市川崑監督の映画では,復讐という目的を遂げた犯人が悲しみを背負いながら自ら命を絶つ…というラストの場面に印象深いシーンが多い。
こうしたラストシーンにはシリーズの魅力が凝縮していると思うが,中でもこの作品のラストはすばらしく,人知れず静かに池の中に入っていく岸恵子の姿が何とも哀しく切ない。
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