コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 007 スカイフォール(2012/英=米)

常に新しいスタイルを模索する姿勢は立派。シリーズが長く続いている理由はただひとつ、「他のまねはしない」、というそれ。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







MGMの財政難とかで大幅に予算ダウンやサムメンデスはアクションを描くつもりがないとか噂もあったようだが、ちゃんと世界のあちこちでロケはしていたし、アクションもケチケチしていなくて良かった。ロンドンやスコットランドのロケが多かったのは、その予算のせいなのかも知れないが、ボンドの出自とMI6への直接的な攻撃という、本作のテーマに即したものになっていたので問題なし。むしろ北海を連想させるスコットランドの荒涼とした風景や、ロンドンの地下鉄を使ったボンドアクションなんていうのは、まったく盲点で新鮮だった。ともすればどこか超人的でフィクショナルな存在が、お馴染みのあの場所を、一般の通行人をかきわけ疾走するシーンは親近感がわいてうれしかった。

最近の作品に関して思うのは、オープニング(アバン・タイトル)とクライマックスのアクションのバランスについてクライマックスが弱いということ。これは物量的なことではなく、アイデアの面という意味が大きくて、概してオープニングのアクションのアイデアのほうがクライマックスより驚きが多いように思う。オープニングは「007やってます」的な、いきすぎた場合はセルフパロディになってしまうくらいけれんみのあるアクションが多いというのは昔からの傾向で、実際、何作かはオープニングが「前回のミッションの脱出シーン」という本作の筋とは無縁の設定で作られてさえいる。つまり「いやー危ないところだったよ、さて今回の事件は何かな?」というわけである。だとすれば、クライマックスがオープニングに負けるということは、「じゃあ前回のミッションのほうを作品にしろよ」ということになってしまう。クライマックスのアクションは、オープニングに比べてシリアスなものが要求されるので、あまりけれんみのあるアイデアは盛り込みにくいのだろう。しかしクライマックスはオープニングより「あっ」といわさなきゃ駄目だと思う。次回のボンド作品への注文はそれだけ。

「最後はその場にあるもので徒手空拳の戦いを挑む」っていうのはボンドの定番なのだが、今回の手製の武器で篭城っていうのは、ちょっと「MASTERキートン」ぽくて、そうなってくるとキートンに分があったかな、という印象が個人的にはあった。もちろん物まねの要素なんか微塵も感じないんだけど、キートンも元SASの特殊部隊員だし、あっちこそスコットランドの景色とかが良く出てくるので・・・。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (4 人)KEI[*] m[*] 緑雨[*] ぽんしゅう[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。