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[コメント] この国の空(2015/日)

男と子供が消え精気をなくした街に降りそそぐ爆弾は、とどめを刺すように残された女を焼き尽くす。二階堂ふみの抑揚のない女言葉の口跡が諦観の日常に艶めかしく響く。抑圧された生命の証であるエロスが、生き物が生き続ける欲望となって暴発するのは必然。
ぽんしゅう

国家間の存亡に対する抑圧が暴発し戦争が勃発するように、人の生命に対する抑圧もまた、のっぴきならない男女の関係を誘発する。男たちが始めた戦争によって歪めらえた里子(二階堂ふみ)の「生への渇望」は、戦時下という特殊な日常においてのみ限定的な充足と幸福を持ち得るという現実。国家の戦争が終わったところから、彼女の戦争が始まるのもまた確かに必然である。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)disjunctive[*] けにろん[*] 寒山拾得[*] セント[*]

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