[コメント] ナイトクローラー(2014/米)
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法を犯してでもネタを撮る、フリーの報道カメラマンを描いてなかなかの切れ味。クズな心性のまま、コソ泥から脱法パパラッチへの華麗なる転身と成功。ウンコ風味のライズ&ライズ。この映画がいわゆるピカレスクロマンとちょっと違うのは、彼はネットで覚えた安っぽいビジネス訓や人生訓をよく口走るんだけど、あれたぶん本当に信じてるんだよな。彼は自覚的に手を汚す悪漢「ではない」、「ゆえにタチが悪い」のである。たとえちゃマズいが、ワタミの創業者さんみたいなもんですね。
クライマックスで撮影した映像をレネ・ルッソに言い値で売りつける、勝利の瞬間。朝のナパームの匂いは格別だ! しかし向い合う2人の奥でモニターに写っているのは、断末魔の部下がカメラに向ける視線。つまりこれは、他者を踏みにじって奪いとった、汚い勝利だ。だけど、それがどうした? なにしろ儲かってウハウハなんや! よーしやったるでえ、で映画は終わる。いやーこの料理、生姜が利いてますな。ちょっと入れすぎじゃない?
ということで現代の断面を見事に切りとった映画ではあるのだけど、正直言って2014年の作品としてはちょっと古いなと感じたのも事実だ。なぜならジェイク・ギレンホールは専業でしょう。現代の先っちょは、もう違うんだよな。事故や犯罪が起こった現場にたまたま居合わせた一般の素人さんが、その場でケータイだのアイホンだので撮影した映像をメディアに売りつける… あるいはタダで提供する時代が「今」なのである。携帯電話のカメラの性能が向上したここ数年、ニュース番組で「視聴者提供」のクレジットがついた映像を見かけない日はない。つまり我々が「あなたって本当に最低の屑だわ!」と思ったジェイク・ギレンホールの悪は、拡散して我々一般素人の内なる悪となり偏在しているのである。そこまで踏み込んでいれば、本当に現代を撃つ映画になっただろうなと思うのだ。こういう「ないものねだり」は筋が悪いってことも判ってるんだけど、たとえば筒井康隆の短編「串刺し教授」はこのような一般人のカメラマン化を描いて鮮やかだ。しかし「串刺し教授」が書かれたのって、写真週刊誌が台頭してきた1980年代だからね。それを思うと、やっぱりちょっと古いかなあ。
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