[コメント] ザ・ウォーク(2015/米)
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演出の面ではとにかく省略と繋ぎ・場面転換が巧みである。地球儀を回しながらパリへの場面移動、ボールを噛むとすぐに歯医者へ移動、子供の頃の練習で綱の本数が減るに連れて主人公も成長した姿になっていく、新聞記事や顔写真などを用いた繋ぎ、本物のツインタワーから模型への場面転換など単なる省略・繋ぎに留まらぬこじゃれた感じが良い。
一輪車に乗っての移動やパントマイムは言うまでもなく、歯医者で隣に座った人間の仕草を模倣する、小道具箱につまずき即座にジャグリングを見せる、こうした小気味良いアクションを適度に挿入してくれている。
パリの路地は水で濡れている、恋人たちは雨の中相傘となる、初めてサーカスの綱渡りを見る場面では主人公だけ他の観客と異なり拍手をしていない、映画はこうでなければならないという場面をちゃんと撮っている。
破れた紙幣を渡すのはそれ自体が面白いが後にその紙幣が返されることで感動的な場面となる、足を怪我するのはラストのサスペンスに生かすだけでなくエレベーターのドアが閉まるのを松葉杖で止める場面も作る、脚本もちゃんと練りこまれていなければこんな演出はできまい。
クライマックスの綱渡りシーンは最初に一度渡り切った際には「ほら見ろ、やっぱりここが一番つまらないじゃないか」とほくそ笑んでいたが、その後も執拗に綱渡りを繰り返されるものだがら流石にはらはらさせられた。とはいえワイヤーの揺れや軋む音、足裏の血痕を見せるだけでは演出として少し弱い。CGの鳥なんかは嘘くさくて出さない方が良かったと思う、その後のヘリコプターの接近だけでも十分だ。全体的にこのシークエンスは演出よりもジョセフ・ゴードン・レヴィットの名演と精緻な特撮に支えられる部分が大きいのだろう。しかしこのような今まで誰も映像化したことがないような場面をちゃんと作り上げようとするロバート・ゼメキスの姿勢は応援したい。
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