[コメント] 海よりもまだ深く(2016/日)
どうしようもないダメな男だなあと思いながらも、「まあ、何かの役には立っているか」とつい受け入れてしまう。そういう人生の優しさをしみじみと描いた良質な映画。『歩いても 歩いても』の続編というか姉妹編というくらい雰囲気はよく似ている。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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特に日常の何気ない描写があまりに自然で上手い。樹木希林の団地で、娘の小林聡美が食卓に座っていて時々、頭をひょいと前に突き出す。最初は「なんだあの仕草は」と思ったが、何度目かのシーンで何のことはない、狭い台所で母親が後ろにある大きい冷蔵庫のドアを開くごとに、ドアをよけるためにひょいと上半身をかがめていたのだった。
「ちょっと」とか「ゴメン」とかいう声をかけるまでもなく、あまりに息のぴったり合った、まさに数十年にわたって団地のこの部屋で家族として暮らしていたんだなあと感じさせる。
物語は、全体として控え目で大きな起伏があるわけでもない。阿部寛の部下である池松壮亮がなんであそこまで阿部寛に懐いているのか、「大きな借りがある」というその肝心なものは、最後まで明らかにならなかったが、彼らの会話とやり取りの姿を見ていると、何となく想像ができるし、二人ともがそれぞれに愛おしく見える。
ダメ人間賛歌と言っちゃたら言い過ぎというか、誤解を招くかもしれないが、まあそれはそれでいいじゃない、という感じの、まさに心にしみる映画だった。
またテレサ・テンの「別れの予感」の使い方も上手くて、『歩いても 歩いても』と本作、さらに阿部寛・樹木希林でいっそ昭和歌謡曲シリーズとかで続けて言ったらどうだろうか。なんだか是枝裕和が山田洋次みたいになりそうだが。
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