この作品では地獄向けの単純馬鹿のみに印象づけられる神木隆之介のドタバタ男ぶりは、最後の転生であるセキセイインコとしての、老いた思い人との切ないキスのために用意されたものかと思われた。あそこで「若くして死んだ」彼の悲劇性を最後のひと絞りまで絞り尽くし、神木は単純な地獄に舞い戻る資格を得たのだ。

好ましかったのは恥知らずの極みのような、皆川猿時の「デブス」娘だ。限りなく鬱陶しいが、なんと人間らしく生きた少女だったろうか。死神のこの上なくクセのある生き方にも涙腺を潤まされた。