コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] アメリカの影(1960/米)

瑞々しい。映画史に残る監督の処女作は決まって瑞々しいものだが、中でもこの映画の瑞々しさ若々しさは特筆に値する。これに比肩しうる処女作ですぐに思い浮かぶものは『市民ケーン』と『勝手にしやがれ』ぐらいだ。
ゑぎ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 20年ぶりくらいで再見したのだが、主人公(次男)と悪友達がブロードウェイの舗道をふざけ合いながら走るカットなんて後の『ハズバンズ』そっくりで嬉しくなった。また兄妹3人がベッドルームで会話するシーンでは天井がばっちり映っており仰角好きの特質はこの時点で芽生えている。またこのシーンの前夜の事件、長男が妹の恋人を追い出すシーンの畳み掛ける演出が凄い。恋人を追い出した後に長男が「おれがついているよ」などと云うのだが、このあたりもカサベテスらしい男気を感じさせて思わず目が潤んでしまう。それは台詞を切り出すタイミングが良いからだ。

 カサベテスは既に演出の勘所をつかんでいると思う。人物の配置とフォーカスの演出で特に感じる。要するに、複数人をパン・フォーカスで撮る場面と被写界深度を浅く撮る場面の切り分け。この映画は即興演出の映画として喧伝されて来たわけだが、このあたりの画面設計は実に巧妙でとても撮影現場の思いつきで決められたとは思えない。いずれにせよこの映画を前にすると観客にとってはシナリオの有り無しなんてどうでも良いことがらであることがようく判る。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (3 人)[*] 3819695[*] shiono

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。