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[コメント] 君の膵臓をたべたい(2017/日)

クサい作品かと思ってごめんなさい。かと言って意外としっかりできた作品と手放しで褒められないのが残念なところ。
deenity

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







原作未読。周囲に見たという人が多いので話のネタ程度に鑑賞しようと思っただけでしたが、結果から言うと見て良かった作品ではありました。 そもそもこの手の作品は好みではない自分にとっては、「ありがちな恋愛青春時代を振り返るくらいならわざわざ映画館まで足を運ばねえよ」と思う可能性は十分ありました。でも意外とじっくり見入ってしまったんですね、不思議と。

振り返ってみると本作の魅力の一つは間違いなく浜辺美波という少女でしょう。飛び抜けて可愛いとか演技が上手いとか言うことではなくて、むしろイチイチ明らさまな動きとか仕草を挟んでくるあたり、最初は若干癪に触る部分もあったくらいなのに、それでも彼女には間違いなく魅力がありました。透明感というか純粋さというか、天真爛漫な行動は好きではないです。天真爛漫なあの笑顔は文句なしに華がありました。こういう作品はまずヒロインと心中みたいなところはありますからね。その点ではメジャーどころに頼るではなく、今後楽しみな逸材を持ってきたことを称賛すべきでしょう。

ここからは内容にも触れるのでややネタバレになりますが、クラスの人気者である桜良が何故地味で空気と化してるカーストの底辺である志賀くんを仲良しくんにしたのか。 もしこの作品で容易く「好き」とでも言おうものなら本作の幻想はぶち壊れます。しかし、お互いのことを尊敬し合う部分があったから惹かれあったとするならばしっくり来るのです。そしてその向こう側に潜む感情にも想像の余地を残すのです。 桜良はクラスの人気者。しかし、そんな外交的な彼女が心の中では自分の死と向き合うことを怖いと感じていた。志賀に外向性はない。しかしそれでも、自立した強さみたいなものがそこにはあった。互いに足りないから補い合う。惹かれ合う。これは実にシンプル且つ嫌味のない理由。 スイパラで志賀は昔の好きになった人を語る。「何にでもさんを付けるのが周りのものを敬ってるようだから」という理由。そこに好感を持つ桜良。地味に伏線を撒いた部分ではある。

さらに桜良が死ぬことによって志賀が成長する物語でもある。というかそこが本筋。だから最初の辺りでの志賀を映すカットはやや暗めのライティングを利かしてあるのに対し、そこに光を降り注ぐかのように桜良は明るく純真に輝いてるカットが多い。 その一方、桜良が死に向かいつつある中で病院のシーン辺りからはライティングが逆転させたりしますね。電話中は後ろ姿しか映さないとか、その辺の使い分けは見事だったと思います。

さっきも言いましたが本作は志賀の成長を描いた作品です。だから最後には恭子にちゃんと言葉をかけられるんです。辞職願を破り捨て、少しは教師らしくできるのです。正直「生きることの大切さ」的なテーマならば既出の部分も多いですし、ありがちになる可能性が高いわけですが、一人の成長譚としての面白さもあるから面白いのです。 でもだからこそ、足りなかった部分も多いのは事実。まず残された恭子との接点が少なすぎること。あのままだとただ親友思いのいい奴というよりは、「何様やねん!」というウザキャラ感が強すぎる。だってこの作品は圧倒的に桜良と志賀の二人に偏っているから、ラストシーンがビックリするくらい心に響かないのは恭子とのシーンが描き足らないから以外の何物でありません。 加えて二人の関係。確かに決定的な言葉や行動をとっていたならば、この作品のバランスは崩れてしまいます。しかし、二人が踏み出せなかった一歩を成長して踏み出すのだとしたら、どうして最後に名前を呼んでやるシーンがないのか。成長を印象づけるシーンを付け加えなかったことに関しては全く理解できません。

正直もっとこうした方が、って箇所は色々あります。隠した本は有名な作品なのに長い間誰にも見つからなかったの?とか、恭子のあの性格なら桜良の死後は間違いなく志賀のところに行くんじゃないの?とか、通り魔は元彼にした方が、とか。でもとりあえず上記の二点だけでも修正していたならもっと高評価をつける作品にはなっただろうと思います。

何はともあれ浜辺美波という子がこれから良い風に成長して活躍してくれると嬉しいのと、ガムの子がいい奴だなってことは声を大にして伝えておきたい。

(評価:★4)

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