[コメント] ラッキー(2017/米)
この世から消え去ってしまうのが怖いから、人はこれから行く「天国」なるものをでっち上げる。主人公ハリー翁は、そんなもののない「無」のみが待つ有限の人生と折り合いをつける必要があることに納得している。だからラッキーは笑うのだ。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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頑固な毒舌家というのがラッキーの身の上だが、そのために孤独に沈んではいない。彼はよく見れば人間好きだ。だから喧嘩相手を憎みつづけない寛容さも持っているし、初対面の男とも、澱みなくとはいえずとも親しく語る。そしてよく笑う。彼の笑いが便利な道具などではないのは、商店の女将に誘われたパーティーで、唐突な歌のプレゼントを披露する場面からも知れる。よくある「不器用な性格」などというエクスキューズなど必要でないほどに彼は周りの人々を思っている。そして愛されてもいる。
こういう飄々としたジジイはやはり気持ちがいい。あるいは映画の闇の中に消えてゆくおのれを自覚し、亀のようにゆっくりとでも生き方の操舵法を変えてみたのかもしれないが、それはこの際いいことだ。ハリー翁の旅立ちを飾るに、この作品は相応しいものだった気がする。「無」となった翁を振り返るにはうってつけだったろう。
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