コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 僕はイエス様が嫌い(2019/日)

ヨーロッパ映画を見ているようなココロモチになる落ち着きと内なるモヤモヤ感の均衡が素晴らしい。監督・脚本・撮影すべてを担ったことも、一貫したメッセージが静かに強く伝わってくる。子役のキャスティングも良い。
jollyjoker

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







いつも笑っているカズマのお母さんにとても惹きつけられた。彼女は「笑っているように」心掛けているのだと思うのだ。別荘がありクリスマスにはきちんと準備してお祝いする。一人息子であろうカズマと友人のユラに愛情をもって心から温かく接している。けれども瀕死の息子を見舞いに来ない(であろう)夫とはうまくいっていない。少し過度で唐突な演出ではあるが、若い監督の人物描写の妙にうならされた。

また、ユラの祖母のゆるいキャラクターも実は存在感は大きい。祖父が障子に穴を空けちゃうのは「なんでだろ〜ね〜」。「おばあちゃんて何にも知らないね」と言われても気にするでもない。そしてこの祖母は祈りとは無関係である。

障子穴からナニモノかを見ていた祖父は既に亡くなり、祖母はあるがままを受け入れて、目的のない編み物をする。カズマの母親とユラの祖母、この二人の人物の対比も、神や祈りを象徴しているのではないか。

信仰を否定するつもりではないが、心に浮かんだ思いや真っ白な雪の中での思い出こそが、俗人にとっての「障子穴から見た希望」なのだと思う。小さなイエスは迷いやluckの象徴なのであろう。いくつでも、どのようにでも解釈できる広い視点をもった作品であると評価したい。

また、曲の使い方、選曲も優れている。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (4 人)セント[*] 3819695[*] ゑぎ[*] けにろん[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。