[コメント] わたしの叔父さん(2019/デンマーク)
例えば朝食シーンは、同じ構図の反復で、テレビのニュース番組の音声(難民キャンプや北朝鮮のミサイル開発動向等のニュース)はオフで聞こえるが、テレビ画面は一切見せない、といった統一があり、確固たる意志を感じさせる画面作りだ。あるいは、クリスと叔父さんが、二人で一緒の空間にいるカットは、中盤まで、ずっと同一フレームに2人が映っている(いわゆるツーショット)。それぞれを切り返したりしないのだ。同じ空間にいて、一人ずつカットが割られるのは、何かの器具の電源コードの修理方法で、2人が言い争う辺りからだ。つまり、この辺り(獣医学や、教会で声をかけてきたマイクへの興味が昂じてきた辺り)から、2人の日常に変化が生じたということを、画面でも示していると思えるが、こういう演出も、確固たる意志を感じさせる画面作り、と思わせる部分だ。
また、劇伴は、ホテルのレストランでの食事後、クリスが車から出て来てマイクにキスをした直後に、農場での風景を繋げる部分で一回しか使われていない。これが、梅林茂の「夢二のテーマ」を彷彿とさせるワルツ曲で、この監督は、本当は王家衛(ウォン・カーウァイ)のファンなのではないかと思ってしまった。あと、クリスがコペンハーゲンから叔父の元へ戻る展開が、手持ちのシェイキーカット数カットで、あっさりと処理される省略の演出には、あっけにとられた。それと、全体に農村風景を絵画的な画面に仕上げることは避けているように私には思えた。やる気になれば、もっと美しい夕景なんかも挿入できただろう。ホテルの食事の後に、鳥の大群を見るロングショットなんかは確かに良いショットだが、美しい風景というのとは違うだろう。むしろ、不安を感じさせるカットでは ないか。この辺りも含めて、この監督の画面設計には、揺るぎないものがあるように思える。一筋縄ではいかないコダワリは、良いと思う。
#朝食時はクリスが1人でナンプレ、夜は2人で言葉遊びボードゲームをする。Scrabbleというのか。「トイレのガラス容器」には笑う。あと「隠居」。
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