[コメント] ジョジョ・ラビット(2019/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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戦争映画としてではなく、無垢の危うさと希望を描いた物として見ました。だから、例えば、少年の幻想でもいいから、反転してユーゲントやロックウェルと一緒にゲシュタポはじめナチを皆殺しにして、それで少女を連れて世界中を敵に回して逃げるんだ、みたいな、憎悪も作用したあえて非難されそうなシーンもあって良かったのではないかと思いました。ウサギと揶揄された彼であっても、少年の無垢には、それだけの危うさがあるはずなのです。そういった危うさと折り合いをつけながら、希望が語られるはずで、「大人になる」ということもそういうことだと思うのです。あえて覚悟を決めて「大人にならない」という選択肢もあったのかもしれないと思うのです。もちろん、不穏な要素の織り込みはあって、ナイフを持ち出すシーンなどはいいし、最低限の材料は揃っていると思います。ただ、もうこれは他の諸氏が書かれていますが、表層的で、踏み込む勇気に欠けていると思いました。健康的過ぎます。悪い映画とは思いません。
『ムーンライズキングダム』を想起する旨、ゑぎさんらが書かれています。私もそう思いました。しかしルックだけの問題で、「危うさ」「毒」という点ではまったくあちらに軍配が上がると思いました。
スカヨハの扱いは、私はあれでよかったと思います。ついさっきまで普通に街を歩いていたのに、あっけなく、突然夢のように消えてしまう。無敵のようだった彼女が。だからこそ現実として受け入れがたく、悲しいのだと思います。退場までの彼女の演技は素晴らしかったと思います。この落差はこの映画で最も成功している部分だと思います。
そしてロックウェルはいつもながら、儲け役を儲け役以上のものにしていて本当に素晴らしいと思いました。時代の道化として自らを晒す超絶変化球かつ壮絶な厭戦の姿勢。今、一番好きな俳優さんです。
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