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[コメント] サマーフィルムにのって(2021/日)

冒頭とラストシーケンスはかなり良いと思う。あるいは主要キャストのキャラ造型も好感が持てる。主人公ハダシ−伊藤万理華の表情の変化、ビート板−河合優実の存在感は書き留めておきたい。それだけに中盤の演出(及び話の運び)の違和感が勿体ない。
ゑぎ

 まず、冒頭アバンタイトルについて。ハダシは、映画部の部室で二人の女子生徒の間の前進ドリーかつ、フォーカスインで登場する。天文部のビート板は、望遠鏡を持って屋上にいる。二人は河川敷のバン(車)の中で、時代劇のDVDを見る。「座頭市」のテレビ版か。『座頭市物語』や雷蔵版『大菩薩峠』への言及。そこに剣道部のブルーハワイ−祷キララが入って来る。3人を横に並べた会話シーンのカット割りも好調だ。ハダシが2人と別れ、一人になる河川敷のカットも良く、さらに、一人で座頭市の殺陣をやりはじめるのだが、このカットがハダシの影も映った良いカットなのだ。そこに凛太郎−金子大地の唐突な登場の演出が来る。というように、主要登場人物を見せ切りながら、インパクトもある良い冒頭だと思う。

 気になった点。ハダシが時代劇を撮る決心をしてから、撮影現場のシーン辺りまでの描写が雑過ぎるように思う。例えば、まず、撮影クルーを集める部分をもう少し丁寧に演出して欲しかった。『七人の侍』みたいに、とまで言うと、贅沢過ぎることは分かっているが。また、基本的にコメディタッチなのだが、実は、私は、くすぐられる部分がほとんど無かったのだ。映画部のメインの撮影隊(甲田まひるや、ゆうたろうのチーム)の描き方や、2つのチームの交錯なんかも、とってつけたような造型に感じられた。ただし、自転車による照明の荒唐無稽さは好みです。

《以下、ネタバレ注意!》

 あと、凛太郎に関する謎の回答が、意外と簡単に見せられる。それは、プロットの構成として早めに提示されるということもあるし、メンバに簡単に打ち明け過ぎじゃないかとか、真実を知ったメンバの反応も軽すぎるんじゃないか、という違和感が払拭できない。さらに、ハダシが巨匠になることを告げるのは、もっと後回しにすべきでは、と思いながら見た。ま、この潔さを美点とする向きもあるかも知れないが。ともあれ、映画というメディアの存続に関する、普通なら切な過ぎるテーマも、臨場感が希薄に感じられてしまった。

 さて、終盤、文化祭で上映される、出来上がったモノクロ映画は、仰角カットが良く、思いの外、画面造型がしっかりしていて、吃驚させられた。そして、最初に書いたが、ラストシーケンスがいいのだ。この展開、この殺陣の演出には、ちょっと興奮した。私の中では、最後にかなりポイントを取り戻した。

#尚、ラストもタイトルが出て来るが、このタイトル、いまいちピンと来ない。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)おーい粗茶[*] けにろん[*] ぽんしゅう[*] ペペロンチーノ[*]

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