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[コメント] 審判(1963/独=仏=伊)

醒めやらぬ悪夢のような執行猶予。
くたー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ハリガネ細工のような遠景の中の人物、細く伸びきった影、ガラス越しの遣り取り、ハレーション気味の映像、低い天井、空ろなほど広い空間、ネジれた空間に誘う扉、そして目、目、目・・・・。

心象風景をデフォルメしたかのような映像は、ある意味表現主義風。ただかつてのドイツ表現主義が、セットと奇抜なメイクなどを基に表現をデフォルメしていったのに対して、あくまでカメラワークと光で悪夢的世界を構築していくのがオーソン・ウェルズ流。あらゆる奇抜なセットもそれ自体の造型もさることながら、カメラと光を伴ってはじめて(現実の風景と共に)悪夢的世界へと転じる、といった感じが強い。

それにしても、最初から最後まで全くスキがないのには驚くばかり。見ているこちらが酸欠になりそうなほど濃度の高い悪夢で、一瞬たりとも夢から逃れることを許さない。個人的には、びっこを引いた女が、でっかい荷物をズルズル引きつつ荒地を渡るクダリがやけに印象に残った。まさに不条理を絵に描いたようなシーン。そして「扉を開く」という行為が、これほどまでに観客に緊張感を強いる映画もないかもしれない。[4.5点]

(2003/8/18)

(評価:★4)

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