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[コメント] WANDA/ワンダ(1970/米)

冒頭は採石場かと思ったが、炭鉱か。左にパンニングするショット。続いて小屋。中に幼児と母親。ぐずる赤ちゃん。ソファに寝ているワンダが唐突に登場し、「私がいると機嫌が悪い」と云う。圧倒的な疎外感の定着。こゝは、お姉さんの家か。
ゑぎ

 次に、黒い道を歩くワンダの超ロングショットからズームインして、右にパンしながら歩く姿を捉える長回しのショット。続いて炭を拾う男に、金の無心をする。これはワンダの父親か。ヘアカーラーをつけたまゝバスに乗り、裁判所へ。裁判は、夫との離婚訴訟。子供二人には目も向けない。全く放ったらかしだったことを認めるワンダ。こゝから彼女の放浪というか、流されていく様子が極めて客観的な視点で描かれる。

 確かに、この徹底した突き放しの視点は大したものだと思う。現在なら、もう少し自主性が描かれる(描いてしまいたくなる)だろうが、この流されるヒロイン像の徹底も、アイロニカルな、逆説的な主張を持ったキャラ造型に感じられる。特に、バーバラ・ローデンが自分で演じてる、という点で、そう感じるのだ。

 また、思っていたよりも、しっかりと作られており、さらに、とても良いシーンが多々あるので驚かされた。私の感覚だと、傑作とまでは云い難いが、佳作であることは間違いないと思う。例えば、上にも書いた、冒頭近くのロングショット。中盤のデニスとの逃避行の中では、お腹が大きいワンダに、デニスが「お前なら出来る」と云い、ワンダは「出来ない」を繰り返す場面。トイレに入って吐くワンダのショットに続いて、唐突に、湖で遊ぶ少女2人へ繋ぐカッティングのセンスなんていいと思う。この後、デニスを助けたワンダが褒められ、とても嬉しそうな表情を見せるのも嬉しくなるし、さらに、ワンダの車が道に迷ってしまう、という展開がメチャ面白いのだ。警官に道を聞くワンダ。これには笑ってしまった。そして、ラスト近くの、夜のロードサイド・バーの場面。玄関に佇むワ ンダ。中から音楽が聞こえて来る。右手から出てきた女性が、ワンダの横を通り、左の建物の二階へ階段を上って入って行く。やゝあって、この女性が画面右上の窓に現れる、といった動きを、パンとティルトで見せる空間の演出には唸ってしまった。この監督も、本作一本しか監督作を残していないというのは、とても残念なことだと思う。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)太陽と戦慄 けにろん[*] ぽんしゅう[*]

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