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[コメント] 青春の殺人者(1976/日)

舞台となる土地の変更に伴う土着性の決定的な変質ほか様々な要因があるとは云うものの、中上健次の小説がこれほどポップになるかと驚く。「ポップ」とは語り口や音楽の使い方だけでなく、血の海にキャベツが転がるといった色彩感覚なども含めて。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







若干のひねりが加えられてはいるが、「炎」のイメージ(と「旅立ち」)による決着というのはいささか安直な気もする。と云っても、それは映画としての「決着」に過ぎず、水谷豊演じる順にとっては何の「決着」にもなっていないのだから、その点は倫理的と云ってもよいだろう。だが私はその放火のひとつ前のシーン、すなわち開店パーティのシーン(水谷のフラッシュバック)のほうに強く心を揺さぶられた。何という切なさ。記念撮影のダメ押しも胸に迫る(小津の『長屋紳士録』や『麦秋』を見てからでしょうか、映画の中に「写真撮影」―殊に記念写真・集合写真の―が登場すると、私はいつも激しく動揺してしまうのです)。

市原悦子についてはよくこれほど人をいらつかせる演技ができたものだと感心。いらいらしながら感心。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)赤い戦車[*] ゑぎ 水那岐[*] ぽんしゅう[*]

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