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[コメント] ゴジラ-1.0(2023/日)

海面。飛行する零戦から真俯瞰で撮った体(テイ)のショット。大戸島。でこぼこの滑走路。海面に浮いてきたのは深海魚なのか。水圧差は終盤でも重要なモチーフ。大戸島でのタイトルロール登場ショットの素っ気なさはいい。ドン・シーゲルみたい。
ゑぎ

 しかし、以降もタメのないショット、展開が続く。これを簡潔でリズムの良いカッティングと受け取る観客もいるだろう。私は、神木隆之介青木崇高が復員するまでの話の運びの割愛具合に驚く。東京の焼け跡で再会する隣人の安藤サクラも性急なキャラ造型だ(しかも、完全なオバさん扱いの役)。さらに、浜辺美波の登場と、神木と共同生活するまでの展開の早さには唖然としてしまった(序盤の神木が、浜辺にだけはエラそうに見えるのにも違和感を覚えた。浜辺の傍若無人さを受けてのこととしても)。

 あるいは、新生丸の船長−佐々木蔵之介の紋切り型口調は、ワザとやっているのだろうが、鼻白らむ。小僧と呼ばれる山田裕貴も薄っぺらい。博士−吉岡秀隆の造型は悪くないが、いずれにしても、説明科白は多い。人物造型という意味では、子役の拙さというか、か細い口調の一貫性は、良い点じゃないか。

 そして、いきなりの銀座だ。このシーケンスの邂逅の都合良さ。それはある意味映画的とも云えるので良いとしても、爆風の後の割愛や(これも潔いカッティング。あと、橋爪功のショットは何だったんだろう)、終盤(わだつみ作戦の決行前夜)、安藤が受け取る電報、あるいは、局地戦闘機「震電」を前にした青木の科白の隠蔽など、後半終盤になって連打される省略の作劇は、ワザとらしいと(リアルタイム、見ているその瞬間から)私には、感じられてしまった。

 勿論、タイトルロールの見せ方に関しては本作も十分に昂奮させられたけれど、私は『シン・ゴジラ』のぶっ飛んだデザイン(特に形態変化と光線放射のデザイン)のスペクタキュラーに軍配を上げる。あるいは、本作の銀座周辺の破壊の見せ方も、見劣りがした。それに、ゴジラのカットについても、フルショットのタメのなさが私には残念に感じられた。特に相模湾へ追いこむシーンなどで、良い構図のショットが出現しても、すぐに切られる(1秒も見せない)のだ。本作の作り手は構図フェチでは無いのは確かだと思う。

(評価:★3)

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