[コメント] 噂の女(1954/日)
路地奥の薄暗がり中、中庭を囲んで女たちの「生と性」、「欲望と希望」が行き来する井筒屋の閉鎖空間はさながら木製の鳥かごのようだ。その分、北白川の病院候補地の開放感、そして一枚の壁を隔てて繰り広げられる能楽堂の男と女の駆け引きが際立っている。
眼鏡姿に垣間見える現実的生活感と、若き医師(大谷友右衛門)に接するさいの母性愛と恋愛が入り混じったような、どうしようもなく「女」を漂わせる母(田中絹代)の所作の混在。凛とした立ち居振る舞いと言動を崩さぬ娘(久我美子)が、希望と恋愛感情を交えつつ大谷友右衛門に身をゆだねる「女」としての初心さ。二人の女に時代を超えた「女」が滲む。
同じテーマを扱った『祇園の姉妹』より数段完成度が高い。私はこちらの方が好き。
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