[コメント] 武士道残酷物語(1963/日)
七世代の男たちの「生き方」をオムニバス形式で描いた意欲作である。テーマは「忠義」であり、各話はベタで今ではどこかで使い古されたストーリーで新鮮味は少ない。
だが、各話に連綿と繋がる「核」がしっかりとしているが故、細切れのパンチが文字通り積み重ねられていき、ボディーブローのように効いてくる。
ただし、ここでいう「忠義」は微妙に姿を変え、最後には「自己保身」を隠す隠れ蓑に変質してくる。もっとも、初代が老い先短い老体を切腹という手段で主家を救った行為も、「恩義の為」とも次代を担う息子と「家を盛り立てる為」という「自己保身」に他ならないのかも知れない。
男たちは「主家」「殿」「国家」「会社」の為に自己を犠牲に生きてきた。そして死んでいった。(尻の穴まで掘られたりもする)痛っ!
だが、私にはどうしてもひとりだけ、ひっかかる男がいる。明治期の奴だ。奴はどこにも所属していなかった。所属という「安泰」は無いが、どこにでも、何でも好きなことができる「自由」があったはずだ。
にも関わらず奴は旧藩主の殿様の世話をする。それはそれで日本人的な「忠義」の示し方ではあろう。とてもいい奴で好感度大である。
問題なのは何の「規律」も「制約」も無く、まして「自己保身」も関係が無い。そんな状況でイカレタ殿様に自分の婚約者を差し出す!呪われた家系にあってコノ好感青年だけは別物である。
先祖が八方塞の状況で苦渋の決断をしてきた中で、奴だけは違っていた。まるで先祖代々の「忠義DNA]が無意識に突出したのかも知れない。大馬鹿野郎だコイツは!
・・・・だが待てよ? 何の見返りもないし、無意識って事は、これが本当の「忠義の心」なんじゃないか?なんだ結局、奴が一番「忠」だったんだ!
何とも「忠義」とは残酷なものである。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (5 人) | [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。