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[コメント] 武士道残酷物語(1963/日)

七人の男の物語である。それぞれにやりきれない想いを振り切って「忠義」を尽くす。いや、生きていく。だが、ひとりだけ許せない奴がいるんだ。
sawa:38

七世代の男たちの「生き方」をオムニバス形式で描いた意欲作である。テーマは「忠義」であり、各話はベタで今ではどこかで使い古されたストーリーで新鮮味は少ない。

だが、各話に連綿と繋がる「核」がしっかりとしているが故、細切れのパンチが文字通り積み重ねられていき、ボディーブローのように効いてくる。

ただし、ここでいう「忠義」は微妙に姿を変え、最後には「自己保身」を隠す隠れ蓑に変質してくる。もっとも、初代が老い先短い老体を切腹という手段で主家を救った行為も、「恩義の為」とも次代を担う息子と「家を盛り立てる為」という「自己保身」に他ならないのかも知れない。

男たちは「主家」「殿」「国家」「会社」の為に自己を犠牲に生きてきた。そして死んでいった。(尻の穴まで掘られたりもする)痛っ!

だが、私にはどうしてもひとりだけ、ひっかかる男がいる。明治期の奴だ。奴はどこにも所属していなかった。所属という「安泰」は無いが、どこにでも、何でも好きなことができる「自由」があったはずだ。

にも関わらず奴は旧藩主の殿様の世話をする。それはそれで日本人的な「忠義」の示し方ではあろう。とてもいい奴で好感度大である。

問題なのは何の「規律」も「制約」も無く、まして「自己保身」も関係が無い。そんな状況でイカレタ殿様に自分の婚約者を差し出す!呪われた家系にあってコノ好感青年だけは別物である。

先祖が八方塞の状況で苦渋の決断をしてきた中で、奴だけは違っていた。まるで先祖代々の「忠義DNA]が無意識に突出したのかも知れない。大馬鹿野郎だコイツは!

・・・・だが待てよ? 何の見返りもないし、無意識って事は、これが本当の「忠義の心」なんじゃないか?なんだ結局、奴が一番「忠」だったんだ!

何とも「忠義」とは残酷なものである。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (5 人)パピヨン 死ぬまでシネマ[*] chokobo[*] 檸檬 氷野晴郎[*]

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