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[コメント] 秋津温泉(1962/日)

女という器から男という器へ注がれる生気。女の器が徐々に空になっていく過程が恐ろしいほどよく描かれています。
づん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







しかも生気という清々しい"気"がなくなればなくなるほど、彼女自身澱んでくる。その澱みを演技で感じさせてくれる岡田茉莉子は素晴らしい。また長門裕之は顔には粘り気があるのに、演技には粘り気とか色気とか、纏わりつくようなオーラが何もない。でも逆にそれが良かったと私は思いました。これで纏わりつくオーラがあったとすれば、新子が秋津にとどまり続ける事が不自然になる。恐らく男に絡め取られて、それこそ『浮雲』のような腐れ縁の関係になってしまう。新子が秋津にとどまり続けた事にこの作品の面白さみたいなものがあったと思うので、私的にはこれは長門裕之で正解だったと思います。

ラストも無駄に説得力があるというか、もうああなるべくしてなったというか、あの悲しい結末の持つ安定感が非常に心地よかったです。

またクライマックスで二人が歩く俯瞰ショットがとても美しくて、なんと印象的なシーンなんだろう!とすごく感動したんですが、同じ事を思っていらっしゃる方がいて、なんだか嬉しくなりました。

それから着物のコーディネートがどれも素敵すぎて、カラー映画の醍醐味を味わった気分です。岡田茉莉子さんは衣装も担当されていたみたいなので、全てご自分のコーディネートなんでしょう。どの着物もものすごく似合ってました。素敵。

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09.03.25記(09.03.24DVD鑑賞)

(評価:★4)

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