[コメント] U・ボート(1981/独)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
急遽視界に現れる敵駆逐艦や飛行機は、誰の責にも帰さぬ突発的事故であり、それを克服するのは戦術でも機転でもなく、一機関長、技術者のスポコン的ガッツで、しかもその成果は台詞により伝えられるのみ、更に追い討ちとして勇壮な音楽がワァーッと鳴ったりするもんだから、俺の方はむしろ気が抜けてしまったくらいであった。
ラスト10分、イタリアの港への爆撃も、まるきり天災であり、リアルと云えばリアル、無常と云えば無常だが、それで戦争を描ききったとは俺には到底思えず、振り返ってみれば、ドイツ青年とフランス娘のセンチメンタル悲恋、従軍記者と海兵達の相違、友情の描写も、成功しているとはとても云えない。冒頭に置かれる長めの献辞も大きなお世話であった。
ならば純正、ディザスター映画と見直して、『ポセイドン・アドベンチャー』など思い浮かべてみれば、かの名作に勝っている箇所が殆ど見られず、例えば、常に水平方向に向けられたカメラの、映し出す水しぶき、叫ぶ艦長の横っ面は、さながらドリフのTVコントだし、艦内に「穴」の一つも空けずに撮り終えたと思しき、バストショット、顔面アップの連続は3時間持たせるには単調過ぎる。手ブレも使い過ぎだろう。
艦員に生い茂る髭を使っての時間表現、転じる疲弊の表現は的を射ており、スペインはビゴ港での対比(客船乗員の、誰にも髭が生えていない)も、気を抜いりゃ見落とす程度に控えめで、悪くなかったが、全体、ディレクターズカット完全版とは何だろう、どこを足したのか、まだまだ一向に、充足していない気がするのだが?
(@早稲田松竹/1997年ディレクターズカット 209分)
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (4 人) | [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。