[コメント] 地獄の黙示録(1979/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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途中だれるところもあるんだけど、構成のしかたからみると、ベトナム戦争そのもの、あるいはベトナム戦争の構造を描ききったと断定したいくらいのすごさ。アメリカがベトナムに勝てなかったということ、理由、無意味さ、とにかくあの戦争をハッキリ突きつけてる。
ヘリで一気に着いちゃだめなんです。それでは断絶がある。川という連続的なもの(つながっているもの)を這うようにのぼり、矛盾と狂気が徐々に精神にしみこんでいく過程をみせなければならない。どこからおかしくなっているのか、わからなくするためにも。
川をのぼるにつれて、登場する者はどこかしら弱くなってゆく。“支配者”ではなく“敗者”へ移ろっていくように。しかし、(矛盾する書き方になるけれど)果たして狂気は増しているのか? そもそもなにに対する狂気なのか? いったいなにを狂気とみなすのか? カーツ大佐へたどりつくとそれがわからなくなってくるのだ。
カーツ大佐が神のように王のように崇められているって? 違う、洞窟の奥に逃げ込み、追い詰められていたんだ。まともだったからこそ弱者・敗者としてしか存在できなくなってしまい、殺してくれる誰かを待ちつづけていたんだと思う。思想を言葉で語りすぎとも思えたけれど、表現のわかりやすさを取るならばいたしかたない。彼の魂は狂っているのだろうか、誰が正気で誰が狂気か、そんなことはもうわからない……。ウィラード大尉がカーツ大佐を殺した時、私はただ心の中で「ああ地獄だ」ってつぶやいただけ。そしてその直後、カーツ大佐も「地獄だ」とつぶやき息絶えた。
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