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[コメント] 男はつらいよ ぼくの伯父さん(1989/日)

マドンナに恋をするということ――
kiona

ゴジラVSビオランテ』が劇場公開された冬だった。そのシーズンのメジャーな映画は、全部(他に、『バットマン』、『バック・トゥ・ザ・フーチャーpart2』、『ゴースト・バスターズ2』、そして『ロック・アップ』、あ!『ハーレム・ナイト』は見てないや…)、映画館で観た。この『寅さん』も見た。その時、自分は中学一年生だった。

この映画で今もって鮮烈に甦るのは、泉の無欠の美しさ。クラスに一人、或いは学校に一人いる「高嶺の花」=まさにマドンナのシンボルだった。

彼女が喜ぶのを見、粋がってラッパを吹く満男の姿は、本来ならマドンナを下から指くわえて眺めることしか許されないはずのボンクラが、まかり間違って目を置かれて有頂天になっている様は、見ていて切なく、とても痛かった。何故なら、マドンナはいつかあっけなく去っていってしまう――そんな現実を、物語に対する予感として抱いたからだ。

そう、満男と泉の間には、明確な一線があった。これは、続編で二人の関係がどうなっていくかという問題ではない。この映画、この時点で、満男は、泉を目の前にしながらも、夢のような時間を必死で取り繕うとする無力なボンクラに過ぎない。俺にマドンナをものにできるのだろうか? というか、そういう目で見てもらっているのだろうか? ――夢心地の綱渡り。ボンクラとマドンナを囲むサークルも、分け隔てる壁も、寅さんと満男では本質的に違えど、これは間違いなく「男はつらいよ」だったのだろう。

(評価:★3)

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