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[コメント] 赤ちょうちん(1974/日)

“理想の幼妻”を演じる秋吉久美子の演技と肉体、どっちが見終わった後に印象に残ると問われれば「肉体が動き、演技する様」と答えるだろう。彼女の演技が危なっかしい細身を引き立たせているのであって、可愛さだけフェロモンだけで秋吉久美子は成立しない。作品は、さらにそう。
ジャイアント白田

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







[秋吉久美子]

秋吉久美子様々で、この映画が映画に踏ん張りを続けていられるように思える。若かりし頃の異様な雰囲気の樹木希林や脇役陣がそれを支えたのだが、秋吉久美子という土台はとてつもなく大きい。彼女が今も魅力的な理由は、清純を早々にクリアーして女優のプライドに目覚めたところにある。脱ぐという演技を惜しげもなくするこの女優魂は、現在…いや、これから出て来るであろう女優達のバイブルとなることだろう。女優魂に触れることをためらうのを捨てた時、秋吉久美子イズムが伝承されて全国の女性が可愛くなるのだろう。思わず興奮して、デンパに飛んでしまったが大袈裟ではないと思う。秋吉久美子は女優の鑑だ。

[内容について一言三言]

この若夫婦の「引っ越し貧乏」物語というのは表向きで、「祝福貧乏」物語。どこに行って暮らしても誰からも祝福されないような造りを目指したかのような、アパートや一軒家。誰が悪いのではなく、かといって運が悪いのではなく、若夫婦の宿命と斬り捨てている作者。育児ノイローゼが酷くなり精神病棟に入れられる前に、幼妻の化粧や微妙な変化のサインを見逃し、隣の息子と遊び家庭をどこか遠ざけてしまう、まだ若い23歳の旦那の前途。私は、彼らは子供という結びつきがある限り、再び同じ屋根の下に暮らせることを想像して、行き交う車の往来に目を見張った。

また、作中の若い夫婦の生き様に反面教師を見いだせると同時に、「若い」ということが、いかに危険で可能性に満ちているのかを見いだせた気がする。見終わって残るのは「俺も秋吉久美子みたいな、ピチピチした十代の嫁さん欲しいなぁ〜」と、よだれを垂れ流すだけではない。

2002/12/29

(評価:★3)

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