コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 待ち伏せ(1970/日)

日本映画凋落著しい70年という公開時を思うと、最早物語的面白さを期待するのではなく、観客自ら進んでこの俳優たちの顔合わせをを面白がるべき映画。そして、今となっては日本映画黄金期を支えてきた者たちへのレクイエムとして謹んで観賞すべきイベント映画。
ぽんしゅう

東宝(三船敏郎)、大映(勝新太郎)、東映(中村錦之助)、日活(石原裕次郎浅丘ルリ子)が共演し、戦前からのカツドウ屋(稲垣浩)監督(呼称は決して巨匠や名匠などではない。カツドウ屋だ!)の遺作となったこの映画が、名作や傑作である必要など何もない。この顔合わせが1970年に実現したという一点のみで、日本映画史に名をとどめてしかるべきなのだ。

50〜60年代の邦画黄金期に、各社の金看板を背負い競い合った大スター達の共演に、共演そのもの以外の何を期待しようというのだ。これだけの「顔」が揃うということが、すでにとてつもなく映画なのである。ここにあるのは、手に汗握る波乱万丈の物語や、繊細に丹念に描かれた人生の機微、あるいは映像美の躍動に酔いしれる充実感と、同等の「映画的」興奮を持った「映画的」成果なのである。

惜しまれるのは松竹(渥美清)が、そこにいないことだ。どんな事情(他の4男優は独立プロの社長だ)があったのかは知る由もない。しかし、中村錦之助と共演した『沓掛時次郎 遊侠一匹』の渥美の好演を知る者なら、本作の中に渥美のポジションを見出して叶わぬ夢を楽しむことができるであろう。

嗚呼。浅丘ルリ子以外は、皆故人なのである。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (6 人)tredair ジェリー[*] づん[*] 水那岐[*] TOMIMORI[*] sawa:38[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。