[コメント] キングコング(1976/米)
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ホントは、元祖と比べて特撮の変移を見たかったんです。白黒とカラーだとどうだとか、キングコングの動きがどうか・・・とか。
でも、それ以前の問題だった。だって、モチーフが一緒でも全然ちがう映画だったんだもの。
両者とも頑張ってる映画だと思った。凄く頑張ってる。でも頑張ってる方向が違うのよ・・・。
元祖は、いかに「物体」に命を吹き込んでみせるか、それに徹していた。ウソクサイストーリー、ただひたすら叫ぶヒロイン。そして、人間の生のなんと希薄なことか。登場人物もストーリーも、「動く物体」を飾るための道具でしかなかった。殺した恐竜の尻尾がピクピク動いたのを見て叫ぶ登場人物のコトバ、「まだこいつ生きる!」・・・は、それはまさに製作者のコトバのように聞こえた。「ほら、見てくれよ!まるで生きてるだろう!本物みたいだろう!!」。そうやって子どものようにはしゃぎながら、ゆらゆら動く尻尾を観ている監督の姿が目に浮かぶ。アニメもそれほどまだ流行っていない時代のこと、その時代の人々は、「生きている」人間と「動く物体」が同一世界に描かれた元祖「キングコング」を観て狂喜したんだろうなあ。
一方、76年版キングコング。ひたすらエロティシズムの追求に徹していた。ヒロインは、登場シーンから艶めかしく視線を泳がせる。ヒロインとキングコングの関係を完全に中心に据え置いたストーリー運び、口数の多いヒロイン、やたらと感情豊かで発情したキングコング。島の住人もエロい。男優までもエロい。なにもかもエロい。全てがヒロインをエロく描くための道具でしかなかった。キングコングに拉致されるまでの前半部分はヒロインの露出を増やし「襲われる」ヒロイン像への期待を盛り上げる。そして後半は露出を押さえ、ひたすらセンチメンタルに描く。ああ、なんて精神的にエロい・・。もう、エロエロ。
で・・私は、中学や高校の授業中に、教科書の隅にひたすら落書きしてパタパタアニメ作って喜んでいる阿呆だったりするので。モノ作りが好きでメーカーで働いたりした人間なんで。ものすごぉく頑張っている映画だなあとは思いましたが、やっぱり元祖のイメージを払拭しきれないので、評価2。
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もう、「物体が動く」だけでは世間は満足してくれなくなったのね・・なんだか、さびしいなぁ。
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