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[コメント] トゥルーマン・ショー(1998/米)

束の間、親の気持ちを持たせてくれました。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 この映画のことを知ったのは映画雑誌で。設定を見て思わず笑う。おお、『うる星やつら2』だ。それで拝見。冒頭の照明が落ちてくるシーンで又笑う。おお、『御先祖様万々歳』(『麿子』オリジナル)だ…

 ここまで押井守は私の精神の中に入っていたか。心の奥まで病んでるのお。私は…

 ついでに言うなら私は『うる星やつら2』の無邪鬼が好きだ。一人の夢を叶えるために、全て舞台を設置し、その一人を掌中の珠のように慈しむその姿。それが親バカであることは承知。そしてそれがいかにその人物を歪ませていくのかも承知していながら、それでも愛することが止められない姿が…

 それで必死に逃げるトゥルーマンの姿を見て、それを応援している自分は確かにいた。だが同時に「逃げるな、逃げないでくれ」と手に汗を握って祈っているディレクター役のエド・ハリスの方により共感している自分に気付く。

 何も知らず、自分のために全てが存在する空間にいられたら、それはそれで幸せではないか。何故そこから逃げようとする!

 結果はトゥルーマンは逃げ、書き割りの町の中から外へ出て行く。そこでやっぱりほっとした自分に気付いた。そうか。そうだよな。やっぱりそれで良いんだよな。

 親離れというのは「身体は外界を求め、心は巣の中を求めるアンビバレントによって」なされる。では、子離れというのは、「自らの庇護の中に永遠に子供を閉じこめておこうと言う強い欲望と、子供の自立を促す社会的、そして種の保存本能がなせる業」と言えるだろうか。親離れする子供の気持ちが複雑なのと同様に、いやそれ以上に子離れする親の気持ちはより複雑だ。

 そして私の中には「庇護されたい」という思いよりも「庇護したい」という心の方が強いことを教えてくれた作品でもある。

 え?でも、それは監督の狙いじゃなかったのかな?

(評価:★4)

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